事例

Dealey, Renton & Associates
(デイリー・レントン&アソシエイツ)

カルフォルニアのオークランドにある保険会社「Dealey, Renton & Associates」は、1950年に創業の保険代理店です。創業当初は、製鉄業向けの保険の販売を行っていましたが、徐々に、建設やエンジニアリング業界への保険の業容拡大。現在も、建設やエンジニアリング業界へ保険の他、リスク管理サービスを中心とした統合的なサービスを行っています。
現在、西海岸を中心に3つのオフィスを有し、社員数は、90名。社員の平均年齢は、50代前半の会社です。

◆経緯
「Dealey, Renton & Associates」は米国の法律で認められているESOP(Employee Stock Ownership Plan:税制優遇措置をともなう従業員株式所有制度)に基づき、1985年に30%の従業員所有事業化を進めました。
そして、2006年には、100%従業員所有事業となりました。
従業員所有事業化したもともとの経緯は、創業者であるナイジェル・レントンが、子供に絶対に引き継がせたくないという強い気持ちがあったこと、そして、同時に株式を売却したいという事業承継目的があったからです。
従業員所有事業のもとでは、会社の業績がガラス張りになります。そして、インセンディブ契約の営業マンを除き、社長を含めて、業績連動賞与がもらえます。
特に、会社の企業価値に応じて、個々人の口座の金額が増えることは、社員にとってのモチベーションに繋がっているようです。
このように、社員のそれぞれがオーナーの一部となったことで、社員は、“他人事”でなく、“自分事”として経営に参画するようになり、その結果、業績が継続的に向上し、また離職率も1%台に低下しました(米国の平均離職率は10%)。特に、ライフプランナーのように個人事業家のプロフェッショナルで構成される保険会社が、従業員所有事業を通じて、社員が一丸となって、チーム力を強化していることは非常に興味深い事例です。

そして、今回、「Dealey, Renton & Associates」の本社に伺い、インタビューさせていただきました。インタビューに協力していただいた、この4人は、(写真左より、James B. Murphy(Account Executive)、Joanne Makishima (Chief Financial Officer)、Jeanine Kaelin Jensen(Human Resource Manager)、Jerry Kwong(Finance Associate ))は、6人からなるトラスティ―(※)のメンバーでもあります。
※トラストは、ESOP導入企業の株式を購入し、管理運用するための信託を指し、トラスティ―とは、信託を運営するメンバーをいいます。

Q&A

Q:従業員所有事業化へのきっかけは?そして、誰が中心になって従業員所有化を遂行したのですか?

ジョアン:創業者のナイジェル・レントンが、引退を考え始めた時、自分の子供には、引き継がせたくないという意志ははっきりしていましたが、最初から、自分の株を従業員に渡すか、第三者に渡すか事業承継のプランは、まだ、決まっていませんでした。

1985年に初めて、従業員所有事業に移行した際は、30%の比率でした。その理由は、ESOPの税制優遇が受けられたからです。(米国ESOPの制度では、30%以内だと、売却により得た資金を、他の株式に再投資した場合に、その時点でのキャピタルゲイン課税を繰り延べることができる。)
そして、その後、資本政策を見直し最終的に100%従業員所有事業にしました。

Q:従業員所有事業化して、何か変化はありましたか?

ジェニン:最初に、創業者のナイジェルが従業員所有事業化を決めた時、私は、従業員所有事業化がどのようなものであるか知らなかったため、正直、びくびくしていました。加えて、最初に、会社が創業者のナイジェルの株を買って、信託(トラスト(ESOT))に譲渡していくと聞き、買取り資金が巨額となることがわかったため、大変だと思いました。しかし、その後、自分たちがオーナーだという意識が浸透していき、やはり、従業員所有事業化となってよかったと思いました。

ジェームス:私は、2006年の時点で入社3年でした。 入社3年の時点では、既に、100%従業員所有化していました。導入当初は、従業員所有化するんだという感情だけでした。というのも、何十年も経ないと自分の株を引き出せないことから、当時としては、ぴんと来なかったったとのいうのが正直な気持ちです。でも、10年経ってみて、自分たちがオーナーであることを感じ、とてもよかったと思っています。特に、業績が4半期ごとにオープンに報告されるのは、とてもよい事だと思います。

ジョアン:1985年に、ESOP導入した時は、誰もどういうものか知らなかったと思います。会計士でさえも。私は、正直、創業者のナイジェルが、現金化して、創業者利得を得て、EXITしたいだけだと思っていました。また、従業員所有事業化は、定年の際のベネフィットというだけだと思っていました。でも、従業員所有比率が上がっていくにつれ、徐々に従業員所有事業化についての理解も進み、より身近に感じられるようになり、パートナーシップとして責任の意識が増していきました。経営情報がものすごく透明で、オープンになったことで、意識が補強され、だんだん、プライドが醸成されていったと思います。

ジェリー:私も、ジェームスと一緒で、2003年に入社して、100%従業員所有事業化された3年目の2006年の時は、まだ、正直、ピンと来ていませんでした。むしろ、その時は、仕事を覚えるので精一でした。その後、100%従業員所有事業化となった後、100%ESOPの大きな記念行事が開催されました。特に、カードや、文房具が全て入れ替わったりしたのが印象的なぐらいで、それぐらいしか違いは分かりませんでした。その後、従業員所有事業化を教育する機関である、ESOP COMUNICATIONS COMMITTEE(以下ECC)が設立され、このECCを通じて、従業員所有事業というものがどういうものであるか非常によく理解できるようになりました。

Q:どのようにして、オーナーシップ・カルチャーを育んでいますか?

ジェニン:入社時に、従業員所有事業の基本構造を説明します。また、毎年、株価を社員全員に発表する機会があります。これによって、自分の退職金がわかるため、非常にインパクトがあります。そして、毎年10月は全米ESOP月間(ナショナル・イソップ・マンス)でもあるので、外からも情報が入ってきます。でも、何と言っても、透明性、四半期ごとの業績の発表がオーナーシップ・カルチャーを育んでいると思います。

Q:なにかESOP化で印象に残っているエピソードがあったら教えていただけますか。

ジェームス:毎年、6月15日がボーナス・デイといって、このとき業績連動賞与が発表されます。この日はとてもいい雰囲気で、みな興奮します。パーティー的な会社ではないのですが、ベーグルなどを会議室で食べながら、盛り上がります。

ジョアン:その他、印象的な話としては、創業者であるナイジェル・レントンが社長のポジションを、後継者であるアル・チェンに譲ったことは印象的でした。アル・チェンは、20歳代から勤め、トラスティ―も務めた人です。もし、従業員所有事業になっていなかったら、会社を売ってしまうか、同族に譲っていたことでしょうが、長年勤めた仲間に社長職を譲ったのは、従業員所有事業だからこそ取り得た選択だったでしょう。

そして、やはり、ナイジェル自身がオーナーだった時と従業員所有事業化となった時と変わったと思います。以前は、ナイジェルの奥様とナイジェルでボーナスを決めていましたが、従業員所有事業化となった時点で情報の公開が必要となったため、それ以降は、すべて、取締役会を通じて、決めることになりました。たくさんコミッティーができてくるので、やはり、チェック機能もしっかり働くようになり、彼も襟を正すようになりました。明らかに従業員所有事業のトップは違うと思います。

Q:従業員所有化の成功のポイントは? 

ジェームス:社員の定着を考えずに、社員が辞めていくことを前提に、不足する社員を採用するというやり方している会社もあります。でも、当社のように、長くいて欲しいという制度をもうけている会社は、転職を繰り返すことを希望しない保守的な社員が入社します。その結果として、同じ価値観を持って、長く腰を落ち着けようとする人が残っていき、ますます、チームの会社になります。また、お客様にもより責任ある対応をするようになるので、お得意さまとして長期の関係をむすんで頂けています。
もちろん、少しは、個人技能重視の人も入社しますが、やはり、そのような人は長続きしないで辞めていくので、同じ精神文化の人だけが残り、長期的な視点の会社になると思います。

ジェニン:従業員所有事業化をしている会社では、100%人を選びます。とくに、役員クラス(エグゼクティブ・レベル)がそうです。手柄をとって、何億円ももらって、次に移るような経営層は、そもそも従業員所有事業ではそのインセンティブがないので、入ってきません。むしろ、じっくりとチームワークを尊ぶ経営層が入ってくるので、従業員所有事業は、濾過器の役割を果していると言えます。

ジョアン:ナイジェルがずっと言っていたのは、1+1が3になる会社であること、つまり、チームワークです。どんな業界でも、チームコンセプトがあれば、従業員所有事業は機能すると思います。

Q:保険業界のようなプロフェッショナルなスキルが多い業界には、従業員所有事業化は、適合すると思いますか?

ジョアン:従業員所有事業(ESOP)を取り入れている会社は多いので適合すると思います。ただ、従業員所有事業をより貴ぶ人が集まってくるといえます。

ジェリー:一般的に、保険業界では、セールスの部門が手柄型、個人技型の人が多いですが、当社では、セールスの人も個人技型ではなく、チームを貴びます。保険の業界も製造業と一緒です。セールスマンがセールスをとってきたら、それが、アカウントマネージャーに連絡がいき、アカウントマネージャーが保険証書を作成して、それをサポートする経理部がいて、クレームがあったら、クレームを処理する部署が対応して、一つのチェーンでつながるある種製造業のようなチームプレーでもあるのです。

会社概要
会 社 名Dealey, Renton & Associates
業  種保険
本  社アメリカ合衆国 530 Water Street, 7th Floor, Oakland, CA 94607

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